祝福と呪い

「響け!ユーフォニアム」TVシリーズからのスピンオフ映画「リズと青い鳥」を観ました。

メインテーマのごく近くを流れるサブテーマとして、本当に才能がある人の実像みたいなものが描かれていて、京アニはこういった描写が唯一無二に凄いなと改めて思いました。

(以下ネタバレ)

この映画の舞台は「響け!ユーフォニアム」と同じ高校の吹奏楽部です。主人公は内気なオーボエ奏者で、唯一の友人であるフルート奏者とソロの掛け合いをやる(ことを言い訳に親睦を深める)為だけにコンクールを目指すような、それなんか違うんじゃね的なスタンスの人です。

その主人公の目線で語られるので、映画は静かな、悪く言えば陰キャ感が前面に出たトーンで進んでいきます。主人公が憧れる友人は典型的な陽キャで、努力もするし才能もある人です。

でも蓋を開けてみれば実は、その地味なはずの主人公こそが真の天才で、彼女が本気モードで演奏すると周囲を全員ねじ伏せてしまいます。陽キャ友人はそのことを分かっていたし、どんなに意識高く努力しても策を練っても主人公には届かないのです。

そしてここが本当に切ないのですが、かといって主人公は周囲をねじ伏せたい訳でも、まして陽キャ友人に勝ちたい訳でもなかったのです。彼女はただ友人に近づきたいだけで、それだけの想いで吹いているからこそ周囲の心を揺さぶるという、皮肉に見えてその実極めて本質を突いた構造になっています。

だから「それなんか違うんじゃね的なスタンス」と上に書きましたが、実はそれこそがアートだったのです。でも陽キャ友人はそこまでは分からないし、もし分かったとしても同じ真似はできないでしょう。

才能は祝福であると同時に呪いでもある訳ですが、でも最初に書いたようにそれはこの映画のメインテーマではなくサブテーマです。メインテーマは、そのような呪いすら2人がどのように乗り越えたか、という部分にあります。映像美はまさに究極のレベルだし、自分的にはこの映画は最高傑作です。