「X-MEN」という超能力者達の戦いを描いた映画を観た方も多いかと思います。主人公はウルヴァリンという、拳からシャキーンと金属の爪を出す男です。1作目の序盤、少女がウルヴァリンに「爪を出すとき痛くないの?」と尋ねるシーンがあります。ウルヴァリンは「…痛いさ」と答えるのですが、僕はこの時点でこの監督を信用することに決めました。

前回書いた「SCORPION/スコーピオン」は、高IQ者のことをかなりリサーチしていると思います。よって上の例で言えばウルヴァリンの爪の話は把握しているのですが、「痛くないの?」とまでは訊いていないのです。実は、ウルヴァリンにその質問をする少女もまた超能力者です。触れるだけで相手を殺してしまうという呪いのような能力を持っているが故にウルヴァリンのことも分かる(そういうとんでもない難役なのでアカデミー賞受賞子役、アンナ・パキンが演じています)。そしてそういう人物を描ける監督もまた、少女やウルヴァリンと同じ側の人間であることが予想できます。

勿論何か能力を持てばその分暗くなる、という話ではないのですが、ただ人の心はとても複雑なバランスの上に成り立っているので、大きな何かを加えればそれだけ全体が影響を受けます。これは例えば高額の宝くじに当選した人がバランスを崩すのと同じです。そしてその揺らぎの切なさは、描ける人と描けない人がいる、ということです。

「X-MEN」も人気が出ていろいろな人が監督をするようになり、だんだんと「俺の爪無敵すぎワロタ」みたいな空気になっていくのですが笑、まあそれはそれで楽しいんですけれどね。「SCORPION/スコーピオン」もまた然りです。